柿の木におすそ分け、見守りながら考えたこと 小説家・中島京子さん

中島京子 お茶うけに  「小さいおうち」で直木賞、「やさしい猫」で吉川英治文学賞などを受賞した小説家の中島京子さんが、日々の暮らしのなかで感じるさまざまなことをつづる連載エッセーです。  庭に柿の木がある。  昨年は柿が [...] The post 柿の木におすそ分け、見守りながら考えたこと 小説家・中島京子さん appeared first on Japan Today.

柿の木におすそ分け、見守りながら考えたこと 小説家・中島京子さん
写真・図版

中島京子 お茶うけに

 「小さいおうち」で直木賞、「やさしい猫」で吉川英治文学賞などを受賞した小説家の中島京子さんが、日々の暮らしのなかで感じるさまざまなことをつづる連載エッセーです。

 庭に柿の木がある。

 昨年は柿が豊作と聞いていたのに、我が家の柿の実は数えるほどで、それもみんな、鳥に食べられてしまった。

 実がならなかったのではなくて、夏にすごい勢いで実をつけたのが、あまりの暑さに、秋を迎えないうちに茶色っぽく変色して落ちてしまったのだ。

 とはいえ、ありがたいことに、あちこちから柿をいただいたので、おいしく食べて、余ったもので柿酢を仕込んだ。前年に作ったものは、コバエが湧いてしまって廃棄せざるを得なかったのだった。こちらも地球温暖化が関係している。

写真・図版
画・谷山彩子

 だいたい11月くらいに柿酢を仕込むのだが、そのころは、もうショウジョウバエなどは飛んでいなくて、たかられることも、うっかり容器に入られて卵を生みつけられてしまうこともないと言われていた。それが、2023年の秋はいつまでも暑くて、ハエだの蚊だのはここぞとばかりに飛び回ったのだった。その失態に学んで、昨年は12月半ばを過ぎてから仕込みをした。いまのところ、ぷくぷくと泡を出しながら発酵してくれているが、無事にお酢になってくれるだろうか。

 すっかり坊主になってしまっ…

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