【社説】読書週間に考える AI時代の読書、非効率な出会いの意味

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2026年3月に新装開店した三省堂書店「神田神保町本店」。写真を撮りながら入店する客の姿もあった=2026年3月19日、東京都千代田区

この社説のポイント

・読書や書店に行く経験は、デジタル空間での情報取得と比べ非効率だが意義がある
・読書や書店通いがしにくい人のために、読書の選択肢はさらに広がって欲しい
・出版流通業界は読む人の減少や輸送費などの値上げで苦境にある。仕組みの再構築が必要だ

 図書館や書店で読書週間に合わせたイベントが行われている。読書週間の源流は関東大震災後に始まった読書運動とされる。戦時中に廃止され、出版が息を吹き返した1947年に読書週間として再び始まり、80回を迎えた。

 しかし今、出版流通は苦境にある。紙やインクの値上げが出版社に重くのしかかる。輸送費も値上がりし、出版社から書店に本を卸す出版取次大手のトップも取次事業存続への危機感を表明した。日本出版インフラセンターによると書店数は1万店を割った。

 根本原因は、読書する人の減少だ。古書店が舞台の漫画「本なら売るほど」のヒットからは、特別な本との出会い、本を介して人とのつながりを深めることに、共感する人は少なくないことがうかがえる。ただ文化庁の2024年の世論調査では1カ月に漫画・雑誌以外の本を1冊も読まない人が約63%だった。

 AI(人工知能)時代ならではの読書の意義とは何か。デジタル空間では、関心のある情報が次々表示され、対話型生成AIは疑問への「答え」を冗舌に返す。そんな時代に、自分で本を選び入手し、集中して読む行為は、今となっては貴重な、情報を自律的に得る時間となる。

 特に書店で紙の本を買う経験はそうだ。店まで行き、各店の広さに応じた品ぞろえの棚の間に身を置く。目に飛び込んできた背表紙や書店員の手書きのポップに、関心を思いがけず広げられる。「非効率」だが、時に当初の目的地よりずっと遠くに導かれる。

読み方の選択肢 拡大を

 一方、障害や居住地、忙しさなど、様々な理由で読書や書店通いをしにくい場合も多い。音声で聞ける電子書籍やネット書店など読書の機会は徐々に開かれてきたが、今後も選択肢が広がってほしい。AIの活用も有効だろう。

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屋外に本棚、ワゴンがずらりと並び、初日から大勢の客でにぎわう「神田古本まつり」=2026年10月23日、東京都千代田区神田神保町

 少子化でも児童書は比較的堅調だ。ただ全国学校図書館協議会の学校読書調査では、小学4~6年生が今年5月に読んだ本は平均10.7冊だが中学、高校と進むにつれ減る。SNSやゲーム以外の過ごし方として、読書や図書館、書店の魅力を伝えたい。

 それらが持続可能であるために、紙の本の流通の非効率は改善が必要だ。取次が見繕った本を書店に送る、書店は原則値引きできず、返品可能だが取り分が少ないといった従来の慣行は、改善や再検討が進んでいるがまだ途上だ。昨年成立のトラック適正化二法に対応した輸送費高騰も懸念される。全国津々浦々に多様な本を届けられる従来の利点はできるだけ残しつつ、仕組みを再構築していきたい。

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