第10回57歳から米国留学、「報ステ」元リポーターを翻弄したトランプ政権

報道アナウンサーとして35年近いキャリアを持つテレビ朝日の山口豊さんは、昨年8月から10カ月間、米ハーバード大で研究生活を送った。57歳でかなえた長年の夢。だが、出発までの道のりはトランプ政権の政策に翻弄(ほんろう)され、一度は留学そのものが消えかけた。
留学は、ずっと温めてきた夢だった。
20代で4カ月間、米国に語学留学した。かつてアナウンサーをニューヨークに派遣する制度があり、山口さんも手をあげた。自身も派遣候補となったが、昼のニュースのキャスターを担当していたため、「今行かれると困る」と引き留められ、断念した。
思いがよみがえったのは、2011年の東日本大震災だった。被災地や原発事故を取材し、被災者や遺族の話を聞いた。突然人生の針路を断たれた人たちの悔しさ、やるせなさ。
「自分にはやり残したことがないだろうか」
思い浮かんだのは留学だった。毎年のように、社内研修制度で海外留学を希望したが、かなわないまま約10年。コロナ禍も重なった。
「コングラチュレーションズ」が一転
そこで挑んだのが、「フルブライト奨学金」だ。大学院生やジャーナリスト、研究者に米国留学の資金を出してくれる制度だ。50代半ばだったが、家族も応援してくれた。社会人になった長男も「自分が働いて家にお金も入れるよ」と後押ししてくれた。
2024年11月末、「コングラチュレーションズ」と書かれたメールが届いた。留学先に選んだのは、ボストンにある名門ハーバード大。長年取材してきた気候変動とエネルギー政策を研究するつもりだった。
トランプ政権での留学生・学問の自由
第2次トランプ政権下で、米国をめざす外国人留学生や研究者への門戸が狭まった。2025年5月には学生・交流訪問者ビザ取得の新規面接予約を世界で一時停止。再開後はSNS審査を強化した。学生・研究者向けのビザ発給は前年比23%減った。
政権は大学とも対立した。ハーバード大学やコロンビア大学などへの研究資金を凍結し、組織運営や多様性施策の変更を要求した。米国の研究を支えてきた国際的な人材の流れが細り始めている。
ところが25年1月、トランプ政権が発足すると風向きが変わった。2月、米国務省の国際交流事業の見直しがフルブライトにも影響した。すでに留学している人への奨学金の支給が滞っているという。4月には、トランプ政権がハーバード大への助成金の凍結などを発表した。
フルブライトにハーバード。自らの留学に関係する二つの組織が、政権から目をつけられ攻撃されている。
「これはまずいな」
不安は現実になった。
6月、フルブライトの制度を…
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