考え違っても寄り添いたい 阪神支局襲撃38年、表現の自由問い直す
拝礼所に立てかけられている朝日新聞阪神支局襲撃事件で犠牲になった小尻知博記者の写真=2025年5月3日午前8時46分、兵庫県西宮市の朝日新聞阪神支局、大山貴世撮影 記者2人が殺傷された朝日新聞阪神支局襲撃事件から38年 [...] The post 考え違っても寄り添いたい 阪神支局襲撃38年、表現の自由問い直す appeared first on Japan Today.

記者2人が殺傷された朝日新聞阪神支局襲撃事件から38年となった3日、支局には多くの市民らが献花に訪れた。亡くなった小尻知博記者(当時29)を悼むとともに、今の言論空間について改めて考える姿が多くみられた。
- 「言論への暴力、今も」朝日新聞阪神支局襲撃から38年、市民ら献花
大学時代に小尻記者の取材を受けた千葉県の高校教諭、沼山尚一郎さん(61)は「ちゃんと話を最後まで聞いてくれる記者だった。もし犯人が生きているなら真実を話してほしい」。全国で児童生徒の自死が相次ぐ現状をふまえ、「何げない一言で人を傷つけていないか、自分の言葉に責任を持っているか、それぞれが確認すべきだと思う」と話した。
近畿大でジャーナリズムを学ぶ野村歩玖(ふく)さん(19)は友人らと初めて訪れた。事件を伝える展示を見て「考えが異なることを理由に人をあやめるのは、個人の言論の自由が脅かされていることだと思う」とし、「自分の意見を自由に言えるSNSがある時代に生きているからこそ、考えが違う人にも寄り添える人でありたい」と話した。
生前を知る人の姿も
大阪府高槻市の教員、小山梓さん(48)は同僚と初めて訪れた。小学6年生に社会科の授業で日本国憲法を教えているところで、言論の自由の大切さをどう理解してもらうか、参考にするために来たという。「小尻さんのような温かい人が殺されたむなしさは言葉にできない。他人の人権を守ることが個人の自由につながるということを伝えたいと思った」
生前の小尻記者と面識があり、昨年までこの日は尼崎市の駅前で「青空表現市」を開催していた松中みどりさんも献花に訪れた。「今も世界でたくさんのジャーナリストが命を絶たれている。報道の自由について小尻さんと彼らが天国で何を語り合っているのか聞いてみたい」。ネット上の誹謗(ひぼう)中傷には「事件のあとに暴力に対して持っていたのと同じ恐怖を感じる」という。「心ない言葉を打ち消すくらいの発信を続けていかなければいけない」
集会に250人
西宮市六湛寺町の市役所東館では「5・3集会『朝日新聞阪神支局襲撃事件』を忘れない」が開かれた。約250人が参加し、ジャーナリストの鈴木エイトさんが「ジャーナリズムの今と表現の自由」をテーマに講演した。
集会は、西宮市職員労働組合などでつくる「平和と民主主義を進める西宮・芦屋の会」が2007年以降開いている。
講演前に朝日新聞阪神支局を訪れたという鈴木さんは「時代を経て、言論封殺が直接的な暴力によるものからネット上の誹謗中傷やスラップ訴訟など法的な威嚇へと変化している」と指摘。「悪質化、巧妙化し、追い込まれて人が亡くなってもその責任をなかなか問えない」と懸念を示した。
- 連載「明日も喋ろう」
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