「牛は他の生き物と違う」大詰めの関税交渉、インドのレッドライン
ドライフルーツなどで味付けした名物のホットミルクを調理する、乳製品販売店の男性店員=2025年6月20日、デリー旧市街、伊藤弘毅撮影 トランプ米政権の「相互関税」を巡り、インドと米国の関税交渉が大詰めを迎えている模様だ [...] The post 「牛は他の生き物と違う」大詰めの関税交渉、インドのレッドライン appeared first on Japan Today.

トランプ米政権の「相互関税」を巡り、インドと米国の関税交渉が大詰めを迎えている模様だ。インドが米国への報復関税をちらつかせるなど、攻防は土壇場で激しさを増している。インドが市場開放を拒んでいると伝わる分野の一つが、バターやチーズなどの乳製品だ。
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デリー旧市街(オールドデリー)の路地に面した乳製品販売店。インド北部の牧場でとれた牛乳が原料の製品は、鮮度の高さや味の濃さが評判だ。夕暮れ時、近隣住民が小銭を手に牛乳や「パニール」と呼ばれるチーズなどを買い求める。
店員のスニル・クマールさん(25)は、「米国から牛乳や乳製品が入ってきても、この店ではインド産しか扱わない」と話した。「インドの人びとにとって、牛は他の生き物とは違うんだ」
インドの人口の約8割超を占めるヒンドゥー教徒にとって、牛は神聖な生き物だ。牛乳やヨーグルトは宗教行事にも用いられ、人びとのこだわりは強い。店に毎日通うヒンドゥー教徒の商店員ロヒットさん(40)は、米国製品は「買わない」と言い切る。生産量が十分あるうえ、米国産品の質にも不信感があると語り、「輸入する必要はない」と話す。
話を聞いた消費者の多くが、国産品への信頼と、米国を含む外国製品への不安を訴えた。一方で、若者やイスラム教徒などを中心に、「安くて品質が良いなら、米国産でもいいかな」と話す人もいた。
戦略的結びつきを強める米印
トランプ政権は4月、相互関税の一部の発動を停止し、各国との個別交渉に臨む方針を示した。90日間とされた交渉の期限は間近に迫る。
インドのモディ首相は2月にトランプ米大統領と会談し、両国間の貿易拡大で合意。米印は近年、対中国で戦略的な結びつきを強めており、26%と設定された関税率の引き下げ交渉も他国より早く進むものとみられてきた。
農産物などの市場開放は交渉の切り札にもなり得るが、特に乳製品についてインドは慎重だ。多数派ヒンドゥー教徒の信仰以外にも理由はある。
インドは世界の牛乳生産の約4分の1を担うとされるが、国内に約8千万人いる酪農家の大半が中小零細だ。そのため、バター40%などの高い輸入関税で国が保護してきた。
乳製品メーカー「アムール」を展開するグジャラート牛乳販売協同組合連盟のジャエン・メータ代表取締役はロイター通信に、「(米国側は)余剰生産分をインドに押しつけようとしている」と話し、価格競争力で勝る米国企業から国内事業者を守る必要性を訴えた。
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地元紙インディアン・エクス…
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