熱中症対策に「手のひら冷却」効果的 体重の2%脱水は警戒ライン
15度前後の冷水が入ったペットボトルで手のひらを冷やす=大阪府吹田市 記録的猛暑が当たり前となった昨今、熱中症への対策が喫緊の課題となっています。どうすれば選手らが安全にスポーツを楽しめるのか。5月に開かれたシンポジウ [...] The post 熱中症対策に「手のひら冷却」効果的 体重の2%脱水は警戒ライン appeared first on Japan Today.

記録的猛暑が当たり前となった昨今、熱中症への対策が喫緊の課題となっています。どうすれば選手らが安全にスポーツを楽しめるのか。5月に開かれたシンポジウム「スポーツと熱中症」では、熱中症対策として、身体冷却▽水分補給▽栄養摂取の3点の重要性を専門家が語りました。
- 患者は驚いた「まさかこんな時期に」 増える「梅雨型熱中症」対策は
手のひらを通る特殊な血管 カギに
◇身体冷却
広島大学大学院の長谷川博教授によると、熱中症を防ぐためには、深部体温(脳や内臓など体の中心部の温度)を冷やすことが大切で、その有効な手段の一つが「手のひらを冷却すること」といいます。
手のひらには「AVA血管」という血管が通っていて、体温調節に重要な役割を担っています。AVA血管を冷やせば、冷えた血液が体内を巡り、深部体温の上昇をふせぐことができるといいます。
手のひら冷却はクールベストを着用するより深部体温を冷やすことができたというデータもあり、スポーツだけでなく、消防現場などでも活用されています。
手のひら冷却やアイスバスに入ることなどによって体を外部から冷やし、「アイススラリー」と呼ばれるシャーベット状の飲み物などを摂取することで体の内部からも冷やしていく。練習や試合の前後、プレーの最中などタイミングに応じて、体を内外から冷やしていく方法を準備することが、暑い時期には求められます。
脱水 ときには中枢神経に悪影響も
◇水分補給
長谷川教授によると、脱水で体重が2%減少すると運動能力は20%低下し、4%減で40%低下、5%になると約半分まで低下して頭痛やよろめき、めまいなど中枢神経系に影響が及ぶ危険性があるといいます。だからこそ、こまめな水分補給は重要になります。
自由に水分をとれる環境を作るためには、水筒など「個人ボトルの活用が有効」と長谷川教授は言います。また練習後の体重測定などで、自分が1時間にどれくらいの汗をかくのかを把握することも、水分補給をする際に重要になります。
2021年に行われた東京五輪のサッカー男子日本代表は脱水による体重減少率を2%以内に抑えて、パフォーマンス低下を防ぐ工夫をしていたそうです。
補給する水分の選択も大切になります。体内の水分や塩分の喪失が少ない時は水やお茶、スポーツなどで喪失量が多くなればスポーツ飲料、発熱などの症状が出てくれば経口補水液といった具合に、状況に応じて適切な飲料を選ぶことも重要です。
運動後のたんぱく質摂取、リスク低減
◇栄養摂取
栄養学を専門とする立命館大の海老久美子教授は「朝と運動直後に食事をとることが大事」と指摘します。
特に、朝食から納豆などたんぱく質の入った朝食を取り、運動直後にもたんぱく質の入った食べ物を食べることで熱中症になるリスクが低減するといいます。
「食べる水分補給」という視点も忘れてはいけません。海老教授によると、1日の水分補給のうち、飲み物で1000~1500ミリリットル、食べ物で1000~1500ミリグラムを摂取しています。水分の多い夏野菜やスイカに塩をかけて食べれば、「食べるスポーツドリンク」と言えるほどの水分を摂取することができます。
また試合当日の朝には「いつもと同じものを食べること」が重要だといいます。これから盛夏を迎えるにあたり、「今(5月ごろ)からの食習慣が非常に大切」といい、普段から朝ご飯をしっかりとる癖をつけることが大事だと指摘していました。
クーリングタイム、補食は今年も
◇夏の甲子園での対策
シンポジウムには日本高校野球連盟の宝馨会長が登壇し、夏の甲子園では全国選手権大会前半に選手の熱中症の疑いがある事象が頻発することを念頭に、最も暑い時間を避けて試合をする朝夕の2部制を、今年は大会6日目まで続けると説明しました。
また五回裏終了時に実施している「クーリングタイム」も継続すると話しました。また栄養学の観点から、昨年から試合前の出場校へ「補食」を用意しているといいます。第1試合のため早朝に出発する場合、宿舎が朝食を準備できないことがあるため、甲子園に到着した選手たちが、気軽に食べやすいおにぎりやパンなどを提供しています。
- 2部制での試合開催、高校野球の地方大会でも 試行錯誤を重ねて準備
室内練習、日焼け止めも効果的に
◇プロアスリートは
シンポジウムのパネルディスカッションには元大リーガーで、プロ野球ロッテの監督を務めた井口資仁さん、2011年のサッカー女子ワールドカップで優勝に貢献した川澄奈穂美さんらが参加。専門家と質問を交えながら熱中症について話し合いました。
井口さんは、現役時代に暑さで「自分が出ていた試合の記憶が飛んだことがある」と振り返り、水分補給の重要性を語りました。監督時代は、暑い中でも選手の練習時間を確保するため、室内練習を重点的に取り入れていたと話していました。
川澄さんは、暑い時期は日焼け止めを使っていることを紹介。意識的に帽子を被って練習していることも明かしました。また子どもの頃から早寝早起きをして朝ご飯を食べる癖をつけていたため、「長く現役生活を続けられているかも」と話しました。
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