デジタル世代の「忘れられた民意」を聞け 煽動政治への苦言と展望

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大学生たちが掲げて歩いた、投票を呼びかける矢印看板=2024年10月、福井万穂撮影

 4年に1度の統一地方選挙が来春に迫っています。前回は無投票に終わる選挙も目立ち、議員らのなり手不足は深刻。一方で近年は、新興政党や無名の候補が急速に支持を広げて当選する場面も見受けられます。都道府県や市町村の首長・議員を選ぶ最も身近な選挙で何が起きているのか。既成の政党や支持組織にとらわれない若い世代は、政治に何を求めているのか。現代日本政治を論じてきた上久保誠人・立命館大教授は、「忘れられた民意」との向き合いがカギと話します。

政治学者・上久保誠人さんインタビュー

この記事のポイント

・デジタルを武器に しがらみのない候補に支持
・既成政党も動員競争 「煽動政治」の時代に
・高市人気は自民支持ではない
・従来の枠外から一気に当選も
・「物語」が人々を動かす 
・アウトサイダー目立つデジタル政治

■デジタルを武器に しがらみのない候補に支持

 ――若い世代の政治意識をどう見ていますか。10~20代の若者や30~40代の現役世代が政治に抱く感覚は、既存の与野党の対立構図で政治を認識しがちな年長世代とは少し違うように感じます。投票する。立候補する。こうした政治参加のあり方にも変化が生じているのでしょうか。

 地方の選挙を見ると、過疎地を中心に少子高齢化が進み、首長や議員のなり手不足の危機が深まっています。一方で、その地域の政治に縁遠かった若い世代や現役世代が、ユーチューブなどデジタル空間での存在感を背景に地方選挙に挑み、地盤などがなくても一気に支持を得て当選する例も目立っています。

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政治学者で立命館大学教授の上久保誠人さん=本人提供

 背景にあるのは、政治や社会の行き詰まりの打破に期待する若い世代や現役世代の政治意識です。その期待を受け止めているのが、SNSやショート動画などのデジタル媒体を使いこなし、既存の政党や支持組織、業界団体などとのしがらみのなさを売りに掲げる人々です。私は、こうした人々を「デジタルアウトサイダー」と呼んでいます。彼らは、自らを同様に根無し草だと感じる若い世代や現役世代の有権者をネット経由で動員して支持を広げ、当選ラインの票数が相対的に少ない地方選挙で当選することが常態化しつつあるのです。

■既成政党も動員競争 「煽動政治」の時代に

 ――地方の一つの選挙であっても、国全体の政治意識の変化につながる予兆でもあるということでしょうか。

 地方選挙における既成政党離れは、加速しています。2024年4月の衆議院東京15区の補選で候補者が乱立し、当選には至らなかったものの無名の候補者への支持が一定の広がりを見せました。同年7月の都知事選では、既成政党が支持しない候補が2位に躍り出て、社会現象とも評されました(石丸現象)。同年11月の兵庫県知事選では、批判を浴びていた前知事が圧勝し、再選を果たしました。25年7月の参院選では参政党が勢力を拡大。さかのぼれば、大阪維新の会や都民ファーストの会のような地域政党の躍進・定着が先駆けと言えるかもしれません。

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兵庫県知事選の最終日を迎え、集まった人たちの声援に応える斎藤元彦氏(中央左)=2024年11月16日午後、神戸市中央区、筋野健太撮影

 こうした動きは海外でも広がっており、今年9月にはドイツの州議選で急進的な新興右派政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が躍進しました。

 近年の欧米や日本に共通する政治状況は、もはや単に個々の政治家や政党の人気取りが目立つ段階を超えて、既成政党を含むすべての政治関係者が有権者の支持獲得を競い合う「煽動(せんどう)政治」の段階にあると見ています。戦後、先進国では幅広い社会層を包摂していた既存政党が多くの有権者から支持を得て競い合う政治が長く続きました。ところが、そうした既成政党が求心力を失い、新興の政治勢力が支持を拡大すると、既成政党の側も減税や外国人政策など耳当たりのよい公約を掲げて有権者の動員に乗り出さざるを得ない。結果、既存政党も含め、各政治勢力が有権者の動員を競い合う新しい段階に入ったという認識です。

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上久保誠人『煽動(せんどう)政治』(三省堂)

記事の後半、若い世代の不満がマグマのように蓄積するなか、なぜか高市政権が高支持率を維持するワケを読み解きます。そんな中で迎える来春の統一地方選。若い世代の政治的関心はどこへ向くのか。既存の政治勢力が目指すべき方向性は。上久保さんが予想するデジタルアウトサイダーたちの動向とは。

■高市人気は自民支持ではない

 ――ただ、国政レベルでは…

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