阿部寛さんが未来へ紡ぐ3.11の記憶 「俳優には何ができるのか」
阿部寛さん=東京都渋谷区、友永翔大撮影 「正直に言うと、めそめそしすぎではないかと思ったんですよね」 台本を読んだ時、俳優の阿部寛の胸に浮かんだ率直な感想だった。 東日本大震災をテーマにしたドラマ「水平線のうた」( [...] The post 阿部寛さんが未来へ紡ぐ3.11の記憶 「俳優には何ができるのか」 appeared first on Japan Today.

「正直に言うと、めそめそしすぎではないかと思ったんですよね」
台本を読んだ時、俳優の阿部寛の胸に浮かんだ率直な感想だった。
東日本大震災をテーマにしたドラマ「水平線のうた」(NHK、3月1、8日夜10時)。演じるのは、震災で妻と娘を失い、今も「もう一度会いたい」と願い続ける宮城県石巻市のタクシー運転手・大林賢次。震災で亡くなった人の霊がタクシーに乗るという話を知り、転職した男だ。幽霊でもいい、乗せることができるのなら――。そんな思いを抱えながら、車を走らせる。
「全てを失って、1人になった男。わらにもすがる気持ちで、タクシー運転手になって、妻子に会いたいという気持ちを何度も想像しました」
ただ、人の悲哀を表現するのに、涙は必ずしも必要ではなく、「人が本当に悲しい時、泣くことよりも、涙をこらえる姿のほうがより深く心に響く」との考えがあった。
だから、震災ドラマの名作「ラジオ」や映画「あゝ、荒野」などを手がけてきた、信頼する岸善幸監督と話し合ったという。
あの震災の日から止まった時間を取り戻すよう生きる人々がいる一方で、今回のドラマでは、震災後に生まれたり、記憶があまりなかったりする若い世代の視点も大事にしている。
「大人たちは震災の痛みをずっと背負っていて、知らず知らずのうちに、その重い空気を若い人に押し付けてしまっていることがあるという話を聞いて、納得しました」。リアルで、繊細な感情表現を追求していったという。
「水平線のうた」は、ドキュメンタリーとしての手法もあるシーンで採り入れ、震災で最愛の3人の子どもを亡くした石巻市の遠藤伸一さんが本人役で出演する。
被災者と真っすぐ目を合わせ、話に耳を傾ける場面は「経験なさったことを、できるだけ受け止めたいと思った。ここの場面は演技をしなくていいと思ってやれた」と語る。
そして、今作は大林の妻・早苗(松下奈緒)が残した曲を再現するために人と人がつながっていく様子が描かれ、音楽の力がクローズアップされる。
「やっぱり音楽の力はすごいと実感します。被災地に行った時、ミュージシャンの方が、ギター一本持って歌い始めると、それまで沈黙していた人たちが、自然と涙を流したり、思い出を語り始めたりするんですよね。音楽は、人の記憶を呼び覚まし、傷ついた心にそっと寄り添ってくれる」
震災時、自身は東京都内のスポーツクラブを出た直後だったという。映画「テルマエ・ロマエ」の撮影のためにイタリアに行く前日だった。
海を渡ってからも、津波などの甚大な被害や福島第一原発の状況がずっと気がかりだった。
そんな中、現地のエキストラ…
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