【詳報】芝野虎丸挑戦者、名人を3期ぶり奪還 一力遼名人が投了
【囲碁名人戦ライブ】一力遼名人―芝野虎丸棋聖 勝てば名人の一局、決着へ【第51期囲碁名人戦第7局2日目】
一力遼名人(29)に芝野虎丸棋聖(26)が挑戦している第51期囲碁名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)の第7局は29日午前9時、2日目が打ち継がれている。3期連続同一カードの頂上決戦は、ここまで3勝3敗。この一番を取ったほうが名人だ。一力名人は3連覇、芝野挑戦者は3期ぶり4度目の名人返り咲きがかかる。
舞台は、静岡県伊豆市の旅館「坂聖(さかひじり)・玉樟園(ぎょくしょうえん)」。立会人は片岡聡九段(68)、新聞解説は鈴木伸二八段(35)、ユーチューブ解説は鶴山淳志八段(45)。対局の模様は、タイムラインで詳報する。
持ち時間は各8時間。1日目の消費時間は黒番の一力名人が4時間9分、白番の芝野挑戦者が3時間21分。
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第7局総括
異例の激闘譜
開始早々、布石を飛び越えて左上で戦いが始まった第7局は、中央、下辺、右下、右上へと休む間もなく戦火が広がり、異例の激闘譜が生まれた。
一力名人は1日目に左上で白石10個を捕獲。2日目に入って芝野挑戦者も右下で黒石9個を取り返し、見返りに名人が中央の白石12個を召し捕る壮絶な石の取り合いになった。それでも互角の形勢が続いたが、最後は巨大な黒模様に突入した挑戦者の白石が右上の黒陣を大きく荒らし、勝負を決めた。

持ち時間各8時間のうち、残り時間は名人1分、挑戦者2分だった。
21:15
一力名人とかぶっていた?
芝野虎丸・新名人が記者会見を終え、囲碁将棋TVに出演し、激闘の本局を解説した。

先番の一力名人の一間高バサミ(黒7)は、自分が先番だったら使おうと考えていた。ところが、その後、自身の研究が不十分な展開に一力名人に持ち込まれてしまった――そんなエピソードを明かした。
20:50
新名人会見「集中して打てた」
名人に返り咲いた芝野虎丸棋聖は、感想戦を終えると、対局室から広間に移って、記者会見に臨んだ。

- 記者会見詳報はこちら
冒頭、記録係を務めた竹下奈那初段から花束を贈られた。まだ硬い表情だったが、カメラを向ける報道陣に笑顔を求められると、ようやくほおをゆるめた。
今シリーズを振り返って、「いいところも悪いところもよく表れた。内容はともかく集中して打てたのはよかった」と語った。
19:25
芝野挑戦者「実感わかない」
終局後、二人は対局室で報道陣の取材に応じた。

芝野挑戦者は「今期は苦しい碁が続いたのであまり実感がわいていない。でも、このような結果を残せたのはうれしい」。「名人・棋聖」の初めての独占については「今回は運が良かった。足りていない部分が多いので、今後もしっかり勉強を続けたい」と語った。

一力名人は「(今期は)競った展開のなかでなかなか勝つことができなかった。結果は実力かな、という気がしています」。今後、自身が持つ二つのタイトル戦のほか、芝野棋聖への挑戦にもあと1勝に迫っている。「来週以降も重要対局が続いていく。一局一局頑張っていきたい」と話した。

19:15
名人が投了
一力名人が投了を告げた。左下での最後の戦いも追い上げかなわず、刀折れ矢尽きた。
芝野挑戦者が212手までで白番中押し勝ち。シリーズ通算4勝3敗でタイトルを奪還、3期ぶり通算4期目の名人に返り咲いた。

19:00
終局近し
両対局者とも持ち時間をほぼ使い切った。ヨセが続いているが、形勢は変わらないようだ。挑戦者の勝利が近づいている。
18:20
挑戦者も秒読み
芝野挑戦者も残り時間が10分を切り、秒読みに入った。最後の勝負どころを迎えている。
囲碁将棋TVの視聴者数は6千人を超えた。

18:10
挑戦者、黒陣荒らし成功
最後の戦いを迎え、挑戦者が抜け出した模様だ。
右上の黒陣に突入した挑戦者の白石に、名人の黒1は全滅を図る手と思われたが、挑戦者は白16まで隅を大きく荒らして生きた。中央の白の大石は死んだものの、こちらを生きては白成功のようだ。

とはいえAIの評価値は白の勝率66%。まだ微細な形勢ではある。先手を取った名人の向かう手は、左下の白陣しかない。ここをどれだけ荒らし返すかが焦点となった。
名人の手が向かったのは黒17。瞬間、AIの評価値は挑戦者の勝率82%に跳ね上がった。
18:00
名人、秒読み
一力名人の持ち時間が10分を切り、秒読みに入った。
17:40
記録係が2人態勢に
盤側に、記録係の伊藤優詩六段と竹下奈那初段がふたり並んだ。残り時間が10分を切ると秒読みが始まるが、それに備えるためだ。大詰めを迎えている。

17:20
棋風と逆
「名人のシノギ、挑戦者の攻め」の碁の構図は、今は「名人の攻め、挑戦者のシノギ」に変じた。
変化に次ぐ変化。万物流転の世界が盤上で繰り広げられている。
17:00
名人、最強手
現状、中央の白の大石に脈はない。しかし周囲に白石の援軍が来れば復活の目も出てくる。その可能性を横目に、挑戦者は白1と右上の黒陣に突入した。黒の隅をえぐって生きれば極めて微細なヨセ勝負になる。

名人はじっと黒2に引いて、中央の白の大石の策動を警戒した。しかし続く挑戦者の白3に対し、黒4と「鉄柱」で応じた。隅の白も生かさない最強手だ。名人は中央の白も、右上の白もすべて生かさないと意思表示した。
「最初から勝負どころ続きでしたが、これが最後の勝負どころですかね」とユーチューブ解説の鶴山八段。「たぶん。でもこれからまだひと山もふた山もあるかもしれません」と立会人の片岡九段が返す。
いずれにしろ、ここもまた一局の命運、ひいては名人の座を左右する勝負どころを迎えている。
午後5時現在、持ち時間各8時間のうち、残る考慮時間は名人51分、挑戦者44分。この難所で時間がなくなってきた。
両者の最終局の成績
熱戦は激しさを増している。
二大タイトルを分け合う名人と棋聖が名人位を争い、最終第7局の2日目の夕方に激闘を繰り広げている。
ファンにとっては究極の時間と言えよう。
のるかそるかの最終局で、そもそも両者はどのような結果を刻んできたのだろうか。
以下にまとめてみた。
【一力遼のタイトル戦最終局成績】通算6勝5敗
〔年-棋戦-相手-結果〕
▽2018年-王座戦五番勝負-井山裕太-敗北
▽2020年-天元戦五番勝負-井山裕太-勝利
▽2021年-碁聖戦五番勝負-井山裕太-敗北
▽2021年-名人戦七番勝負-井山裕太-敗北
▽2022年-棋聖戦七番勝負-井山裕太-勝利
▽2023年-本因坊戦七番勝負-井山裕太-勝利
▽2024年-棋聖戦七番勝負-井山裕太-勝利
▽2025年-棋聖戦七番勝負-井山裕太-勝利
▽2025年-本因坊戦五番勝負-芝野虎丸-勝利
▽2026年-棋聖戦七番勝負-芝野虎丸-敗北
▽2026年-本因坊戦五番勝負-福岡航太朗-敗北
【芝野虎丸のタイトル戦最終局成績】通算3勝6敗
▽2021年-十段戦五番勝負-許家元-敗北
▽2021年-本因坊戦七番勝負-井山裕太-敗北
▽2021年-王座戦五番勝負-井山裕太-敗北
▽2022年-名人戦七番勝負-井山裕太-勝利
▽2024年-十段戦五番勝負-井山裕太-敗北
▽2025年-本因坊戦五番勝負-一力遼-敗北
▽2025年-碁聖戦五番勝負-井山裕太-敗北
▽2026年-棋聖戦七番勝負-一力遼-勝利
▽2026年-十段戦五番勝負-許家元-勝利
【結論】
一力の方が成績は上回るが、両者ともに明確に「得意」「不得意」とは言い難く、直接対決の最終局成績も1勝1敗と分け合っている。
ただ、今年に入ってからは棋聖戦で芝野が一力から棋聖を奪取、十段戦で許家元を相手に防衛。結果を出している。
一方、今年の一力は棋聖戦に続いて本因坊戦の最終局でも福岡航太朗に屈しており、五冠から三冠に後退した。
さあ、囲碁界の勢力図を決めると言っても過言ではない大勝負は終盤戦だ。結果は――。

16:30
戦場は右上に
予想どおり、挑戦者は白1から5まで、右辺の一団を安定させ、同時に右下の黒の大石の取り込みを確実にした。
ならばと名人、黒6と中央の白の大石に襲いかかった。四囲は見渡す限り黒石だらけで、この大石に生きる余地はない。目をむくような大フリカワリが完成した。

このまま右上から上辺一帯がすべて黒地になれば、白に勝機はない。挑戦者は白7に突入した。
死んでしまった中央の大石の復活をにらみながら、名人が確実に中央を殺しにいけば右上隅を荒らし、白7の白石を殺しにいけば中央の大石が復活するような、臨機応変の手段に出た。
戦火は右上に飛び火した。AIの形勢判断は、名人の勝率53%。まったくの互角だ。石の生き死にが絡む激闘が続くなか、互角の形勢が続くのは極めて異例だ。
16:06
フリカワリか
激戦が続いている。局面が落ち着きヨセ勝負になる気配はまったくない。
挑戦者の白1の切りから白13まで。右下の黒の一団に生きはない。名人は黒14へ。白Aなどと受けさせて、真の狙いの黒Bの実現に腐心しているとみられる。

こうなると、一帯の白の大石も生きはない。右下の黒の大石、上辺の白の大石がともに討ち死にする大フリカワリの可能性が濃厚になってきた。
大フリカワリのあとの形勢はいかに。AIは名人やや優勢を示しているが、右上の黒陣には白から手を付ける余地があり、逆に左下の白陣にも黒から荒らす手が残っている。
不確実性の高いエリアがいくつもあり、勝敗のゆくえはまったく予断を許さない。
対局開始早々から息つくヒマもない激闘が延々続き、形勢もほぼ互角の状態が続いている。「こんな碁はなかなかない」と新聞解説の鈴木伸二八段。
16:00
熱戦に注目
2日目の夕方になっても勝敗の行方がわからない展開に、囲碁将棋TVのライブ配信にも注目が集まっている。午後4時現在、視聴者数は4千人を超えた。
視聴者からは「結局ほとんどずっと際どい戦いの碁に」「打ってるほうはしんどいでしょうけど、見てるほうには見応えありますね」「囲碁史上に残る一局をいま見ているんだ」などといったコメントが寄せられている。
15:00
両者フルーツ
午後3時、両対局者におやつが振る舞われた。2人がともに選んだのは、フルーツの盛り合わせ。飲み物は一力名人がアイスコーヒー、芝野挑戦者がアイスティーを選んだ。

囲碁将棋TVの配信では、記録係を務めている竹下奈那初段がナシやパイナップルを試食し、「甘くてみずみずしい」などと食レポ。こちらも2日間の長丁場の疲れを癒やした。

15:00
両者、残り2時間弱
午後3時現在の消費時間は、名人6時間7分、挑戦者6時間18分。修羅場の激闘第2ラウンドに入って、気になる残り時間はほぼ五分だ。
14:20
名人、妥協せず
左上から延々と続いた戦いが収束して1時間。再び戦火が上がった。
ヨセ勝負に入ると思いきや、名人が右下の折衝で手を抜き、上辺黒5に向かったため、挑戦者は白6以下10と右下の黒の一団に寄りつく。ここでAIは黒11とつながらず、中央の一団を強化して黒優勢の図を示していた。

名人、捨てるか助けるか。先にAIの変化図を見ている検討陣は名人の次の手を固唾(かたず)をのんで待った。
名人は黒11へ。一切妥協せず、右下の一団を助けた。こうなれば挑戦者は白12と切断するよりない。AIの形勢判断は黒の勝率60%から白の勝率60%に逆転した。ただし目差にしてわずか2目。生きるか死ぬかの戦いでなぜこんな数字を出せるのか。人間的には不明だが、いずれにせよ、また戦いになった。
中央の黒の一団は、左上の白の一団を掌中に収めているため心配はないが、包囲されると攻め合いになってしまう。そこをケアしながら右下の黒をしのがなければならない。
シノギの名人、攻めの挑戦者。結局、両者の棋風どおりの戦況となった。
14:15
秒読みに注目
本局の記録係の一人、伊藤優詩(まさし)六段(35)が記録の合間に囲碁将棋TVに出演した。鶴山八段いわく、「名人級」の記録係。特に、秒読みに定評がある。のどの調子を整えるために、宿の部屋で発声練習を欠かさないという。

鶴山八段に過去の「事件」を尋ねられると、こんなエピソードを披露した。封じ手を開封した立会人が対局者に告げる前に、記録係の伊藤六段に見せてきた。封じ手の位置の縦と横の数字をどちらを先に読むか分からないと察した伊藤六段は、小声で立会人に伝えて、事なきを得たという。
激戦の大一番もまもなく終盤を迎える。伊藤六段の「美声」をお楽しみに。
13:20
虫?景色? 名人が気にしたものは
両者がガンガンと着手を交錯させていた午後1時19分ごろ、やや珍しいシーンがあった。
手洗いに立った一力名人が帰室する際、窓側の障子に手を掛けながら「しばらく開けといてもいいですか?」と芝野挑戦者に相談。挑戦者が「あ、ハイ」と応じたため、名人はスッとオープンしたものの、すぐに再びクローズ……。いったい何が……。
最終第7局の2日目という舞台設定を除いても、戦いのさなかにある両対局者のコミュニケーションは極めて珍しく、控室では「虫を逃がそうとしたのではないか」などと謎解きトークが交わされた。
議論の結果を総合すると、「気分転換に窓外の駿河湾の風景を見ようとして障子を開けたものの、さらに奥のガラス窓のカーテンが閉ざされていたため、即断念」との説が最有力と結論付けられた。
対局環境に何かが起きたら対応するのは、もちろん立会人だ。片岡聡九段も最初は気にしていたが「いや、虫とか景色とか言っているような場合じゃない局面です。もう2人とも忘れてるはずです」ともっともな意見を語り、静観を判断した。

鶴山監督、最年少新人王を語る
第7局が始まる前日、囲碁界にはビッグニュースがあった。柳原咲輝(さき)二段が第51期新人王戦で優勝。16歳0カ月での戴冠(たいかん)は史上最年少で、女性の新人王は2023年の上野愛咲美女流名人(25)に次ぐ2人目という快挙だった。歴代の新人王には、一力名人、芝野挑戦者も名を連ねる。
柳原二段は、女性棋士の団体戦である日本女子囲碁リーグ(Li LEAGUE)に参戦している。所属チームの監督を務めるのが、本局ユーチューブ解説の鶴山淳志八段だ。

柳原二段は幼い頃から将来を嘱望され、23年に12歳でプロ棋士になった。監督として、この2年間見守ってきた鶴山さんによると、今年の序盤は試行錯誤で苦しんでいる様子だったが、調子がだんだん上向いているように見えた。「その実力をついに出せるようになった」
囲碁界では今年7月、20歳の福岡航太朗本因坊が一力名人から本因坊を奪取し、現在は王座戦でも挑戦中だ。20代後半の一力名人、芝野挑戦者を追いかける世代の台頭の兆しが見えている。
「許家元九段を含めた〝三羽ガラス〟の壁が厚かったが、ひとり出てくると、自分もいけるかも、と同年代への刺激になる。若い世代がどんどん出てくれば、囲碁界は盛り上がっていく」と鶴山八段。
柳原二段にも、そのポテンシャルは十分にあるという。「まずは藤沢里菜さん、上野愛咲美さん、梨紗さん姉妹の3強の牙城(がじょう)を崩して、女性タイトルを。その先には、(男女が競合する)一般棋戦でのリーグ入りなどを目指してほしい」とエールを送った。
13:20
挑戦者、矛を収める
昼食休憩明けの進行は挑戦者の白1から。黒6まで換わって白7と左辺を守った。この手で白Aから出切れば激闘の延長戦となるところだったが、挑戦者が矛を収めたことで、ようやく戦いが収束した。

白Aを推奨していたAIの挑戦者の評価値は下がり、名人が優勢を維持している模様だが、右辺には石のない広大な空間が残っている。
新聞解説の鈴木伸二八段は「見た目は白地のほうが広い。黒から左辺の白陣にどれだけの手が残っているかどうか」。デジタル解説の鶴山淳志八段は「全然、難しいです」。
神経を使うヨセ勝負は、白兵戦とは別世界の厳しさがある。


13:00
対局再開
午後1時、対局が再開した。芝野挑戦者が10分後に、116手目を打ち、左上で攻防が始まっている。
12:00
最後の勝負飯はそば
芝野挑戦者が116手目を考慮中に正午となり、休憩に入った。休憩前の消費時間は黒番の一力名人が5時間14分、白番の芝野挑戦者が5時間11分。

両対局者とも昼食に選んだのは、山菜そば。試食した鈴木伸二八段は「しっかりした味の出し汁で食べ応えがある。山菜もいろんな食感があって、飽きが来ない味」。
11:30
白の大石、安泰に
名人の封じ手黒1に対し、挑戦者は白2と絡みついて、相手の反発を利用してサバキ形をつくろうとする。気になるのは中央から下辺に延びる白の大石の命運だが、白12以下18まで、下辺の黒石2個を取り込み安泰となった。その見返りに、名人は黒19まで白石数個を取り込みながら左辺の侵食を図る。

黒19が微妙な一手で、白から19と打たれる手を嫌った。しかし右下白Aからの出切りが気になる。名人としては黒19に対して挑戦者に左辺を受けさせてから、右上の白の出切りに備える算段だろう。
挑戦者は左辺を受けるか、白Aの出切りを敢行するか。左辺を受ければヨセ勝負になりそうだ。白から出切れば、激闘の延長戦となる。その決断により、碁の骨格はがらりと変わる。
AIの形勢判断は名人の勝率70%だが、うのみにできない。まだ石のない広大な空間が残っており、人間的にはまだまだ勝負の圏内だ。


10:10
片岡立会人「戦い抜いて欲しい」
囲碁将棋TVに、封じ手を開封した立会人の片岡聡九段が出演し、戦況を解説した。「8手目から始まった戦いに終わる気配がない」
8手目に左上で始まった戦いは、互いの石がひしめきあいながら下辺にまで延びていき、100手を超えた。「終局まで戦い抜いてほしい」と話す片岡九段に、鶴山八段は「それで半目勝負が最高。最終局なので見られるものは全部見たい」。片岡九段は「そうなると新聞解説はたいへんだね」と笑った。
9:05
「自然な対応」
対局再開前から囲碁将棋TVでは、鶴山淳志八段が新聞解説の鈴木伸二八段と一緒に解説を始めた。
一力名人の封じ手は、前夜の中継でも検討陣が有力とみていた一手だったが、AIは別の手を推奨していた。鶴山八段は「いちばん自然な対応」、鈴木八段は「人間ならここに打ちますね」。

- 鶴山淳志八段 あの夜、治勲先生からの伝言 小学生は内弟子になった
- 鈴木伸二八段 中学2年生の僕は、負けたからプロになろうと思った
9:00
封じ手は最強手
午前9時、両対局者が前日までの局面を並べ直し、立会人の片岡聡九段が名人の封じ手を開封した。座標を読み上げる立会人の声に合わせて、名人が盤上に封じ手の黒1(95手目)を打った。

検討陣が予想したいくつかの候補手のうち、黒1は最強手だ。前日に挑戦者が放った様子見の△に対し、中央から下辺に延びる白の大石へのプレッシャーを強める一手だ。
これを迎えて、挑戦者は大石をどうさばくか。△と黒1の交換で白Aの手段が生じて、左辺の白の地模様にはプラスとなっているが、中央の白の大石はいよいよ窮屈になってきた。挑戦者のサバキの手腕が問われている。

1日目総括
きしみあう接触戦
対局開始直後から布石そっちのけで突入した激戦は、収束することなく全局に波及している。
両者3勝3敗で迎えた最終局は、芝野挑戦者の左上白8のカケに一力名人が黒9、11と出切り、最強手の応酬となった。

上辺黒25が左方の白を攻める強手。白30から脱出を図る挑戦者に対し、名人は黒31、33と形構わず封じ込める。包囲網は傷だらけだが耐えており、黒53で左方の白石10個を召し捕った。
名人は大利を得たが、これで形勢は互角。挑戦者が白56から包囲網の弱点を突いて逆襲に転じ、ここでいかにポイントを取るかが焦点になった。しかし、石と石がきしみあう接触戦は徐々に名人有利に働き、黒93まで中央から下辺に延びる白の一団が標的になった。

解説の鈴木伸二八段は「挑戦者の白94は、相手の応手次第で作戦を選ぶ様子見の一手。名人の次の手次第で碁の展開が変わってきます」と分析した。
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