日朝関係史講座が36年目へ 同志社大学生がつむいできた歴史
日朝関係史講座をささえる同志社大学KOREA文化研究会の学生。左から崔宇蘭さん・尹美紀さん・陳慧朱さん=2025年1月17日午後4時20分、京都市上京区の同志社大学、下地毅撮影 同志社大学(京都市上京区)の学生サークル [...] The post 日朝関係史講座が36年目へ 同志社大学生がつむいできた歴史 appeared first on Japan Today.

同志社大学(京都市上京区)の学生サークル「KOREA(コリア)文化研究会」(愛称コリブン)による自主講座・日朝関係史講座が、2024年12月に35周年をむかえた。在日朝鮮人の学生が、歴史を見つめ存在証明をもとめて連綿とつないできた。36年目のことしは5月に開講する。
24年度の後期講座は、昨年10月から12月にかけての金曜夜に同志社大学・至誠館の教室であった。最終日の12月13日、社会学博士の梁愛舜さんが「35年を振り返る」という題で語った。梁さんは講座の顧問でもある。
梁さんによると、大学に在日朝鮮人の学生もたくさんいるのに、朝鮮語を学ぶ授業がないのはなぜかを問い、正規の課程につくるようにと大学当局にもとめる交渉が1988年にあった。実現には時間がかかるため、まずは学生による自主講座をひらくことにし、翌89年に日朝関係史講座はうまれた。
はじめは、歴史・文化・時事問題と朝鮮語講座の2本立てだった。96年に経済学部が朝鮮語を第2外国語に採用して他学部も追いかけたため、以降は歴史・文化・時事問題だけになった。学外の市民も受講できるのは出発時からの伝統で、①歴史を知り真の友好関係を構築する②在日朝鮮人学生のアイデンティティー涵養(かんよう)③学生・市民・講師がともに考える――という目的も変わらない。
梁さんが力説したことのひとつに、「開講以来、時代の動きに対応するテーマを追い求めてきた」がある。
講座ができて4年後の93年、「慰安婦」への日本軍の関与を認めて「お詫(わ)びと反省」を表明した河野談話があり、2002年には北朝鮮による拉致被害者5人が帰国した。揺れる日朝関係を反映して、朝鮮学校・植民地支配責任・ヘイトクライム・震災と外国人……と講座の内容も多岐にわたった。
このように35年をふりかえり、友好の糸口をさぐろうと時事問題を正面から取りあげてきたと梁さんは語った。「事実にふたをしては骨太な友好関係は築けない。日朝関係史講座は希望の言葉を発信しつづける。これからも、ごいっしょに」としめくくった。
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もうひとつ梁さんが強調したのは、「35周年は、先輩から後輩へと継承してきた学生たちのおかげ」だ。
講座を主催するコリブンには在日朝鮮人の学生ら十数人がいる。年間の総合テーマ(表1)を決め、前期と後期(表2)の内容を詰め、それを語るのにふさわしい研究者ら講師を手配している。
4月から4回生になるコリブン会長尹美紀さん(21)と、この春に卒業する陳慧朱さん(23)と崔宇蘭さん(22)によると、「時事性と時代性」と「自分が学びたいことと社会に伝えたいこと」とをかけあわせて講座の内容を絞りだす。
3人が異口同音に語ったのは、コリブンという場のかけがえのなさだ。尹さんと陳さんは兵庫の朝鮮学校出身で、崔さんは愛知の日本学校だ。「日本社会で朝鮮人であること」に不安があったことは共通している。大学入学まえは、「日本人の友だちができるだろうか」と心配した。入学後は、「なんで帰らないの」「ほぼ日本人じゃん」と言われても、歴史を知らないから抵抗できないこともあった。
誇るべきルーツを「隠したいもの」と思わせる構造を見ぬくのに歴史の勉強は欠かせない。自我を確立している学生と揺らいでいる学生が学びあうコリブンは、「フツーの大学生」(陳さん)がつどい、「自分とつながりのあるものを大切にできる場」(崔さん)であり、「いちばん自分らしく過ごせる場」(尹さん)であるという。
5月に開講する前期講座の詳細はSNSで知らせる。聴講無料。運営にあてる寄付も募っている。問い合わせはコリブンのメール(koreabunkakenkyukai@gmail.com)へ。
過去10年間の年間総合テーマ(表1)
2015年 「解放」・戦後から70年~日朝関係の現在地~
16年 東アジアの平和と朝鮮半島~日朝関係改善と分断の「克服」~
17年 新たな南北関係と日本~激動する朝鮮半島情勢の中で
18年 継続する日本の植民地主義と朝鮮
19年 ~日朝関係史講座30周年記念~3・1独立運動から100年 いま、日朝関係は
20年 朝鮮解放から75年―日朝関係のいま、むかし
21年 日本の歴史と「朝鮮」の境界
22年 東アジアの平和とは~今後の南北関係と日本~
23年 関東大震災朝鮮人虐殺から100年~在日朝鮮人の歴史と現在
24年 激動する国際情勢の中で今、歴史を振り返る
2024年度後期の各講座(表2)
10月11日 映画上映「WARmericaの運命」
10月18日 滋賀ウリハッキョマダンと多文化共生への歩み
10月25日 京都朝鮮第一初級学校襲撃事件裁判から10年を迎えて
11月1日 在日朝鮮人女性たちの歩み
11月8日 京都ウトロ地区の歴史から見えるもの
11月15日 浮島丸爆沈―事実を明るみにするために―
11月22日 在日朝鮮人と朝鮮語―済州島サトゥリ(方言)を中心に―
12月6日 日本軍性奴隷制問題―「日韓合意」をどう考えるか?―
12月13日 日朝関係史講座35年を振り返る
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