予想裏切るセッチュウ、ドルガバのパジャマパーティー…ミラノメンズ

　2026年春夏シーズンのミラノ・メンズファッションウィークが6月20～24日、伊ミラノで開かれた。参加ブランドの減少傾向が続くなか、地元イタリアのメゾンに加えて英国勢も存在感を見せた。大手ブランドのフロントロウにはアンバサダーやゲストとして訪れた各国のスターたちが座り、アイドルグループSnow Manのラウールさんのミラノ初ランウェーも注目を集めた。

セッチュウ

　初日のショーのトップバッターを務めたのは、ミラノに拠点を置くセッチュウ。デザイナーの桑田悟史がジンバブエのビクトリアフォールズを訪れた旅に着想を得たというコレクションは、現地の職人とともに制作したヤシの編み物が随所にちりばめられていた。

　滝の周りに現れては消える虹と霧を3層のシフォンで表現したドレスは、切りっぱなしの糸くずが漂い幽玄な雰囲気。小魚モチーフが泳ぐワンピースは、スナップボタンを外せば平らなガーメントケースに早変わりする。

　今年1月にフィレンツェで開かれたピッティ・ウオモでの「最初で最後のショー」宣言から一転、半年を置かず新たな舞台を見ることができたのはうれしい驚きだった。理論重視のブランドという従来のイメージに、より軽やかな遊び心が加わった印象。「（予想を）裏切ることが仕事ですからね」と桑田は笑う。

ドルチェ＆ガッバーナ

　2日目のドルチェ＆ガッバーナには、グローバルアンバサダーを務める韓国人俳優チョン・ヘインさんらが来場。「パジャマ・ボーイズ」をテーマにコレクションを発表した。

　ショーの前半はパジャマにジャケットやコートを合わせてエレガントに調和させていたが、後半は無数のビジューや刺繡（ししゅう）がきらめくギラギラのパジャマパーティー。フィナーレではスリッパのようなサンダルを履いたまま外へと繰り出し、白昼の街を夜のパーティー会場に変えた。

ポール・スミス

　ポール・スミスは、花や魚を大胆にあしらった総柄プリントのシャツが目をひく。アースカラーに鮮やかな濃いピンクやオレンジが差し色となり、むせかえるような夏の気分だ。

アルマーニ

　アルマーニは今季、二つのメンズコレクションを発表した。一つ目のショーは「異文化への純粋な関心」というブランドの原点に立ち返ったコレクション。アフリカ文化に着想した複雑で美しいパターンが、土や砂を思わせる色彩の中で映えていた。

　二つ目のショーでは、光沢のある柔らかな素材で仕立てたジャケットやワイドパンツが、男女のモデルの体を流れるように包んでいた。

プラダ

　プラダのショーには俳優の坂口健太郎さんやTWICEのサナさん、韓国の俳優イ・ドヒョンさんら、スターが続々と来場した。

　コレクションは一見ボトムレスかと思いきや、実はコンパクトなブルマーを多用している。銀行員が着ていそうな灰色のテーラードジャケットにアスリートのトラックジャケットを合わせたり、ヒッピー的な花柄や虹色を採り入れたりと、本来は同居しえない異なる男性像をまぜあわせたコレクションだ。

　ワンピースのようなロング丈のサファリシャツ、タイトなニットなど、男性服を「フェミナイズ（女性化）」したアイテムも多い。共同クリエーティブ・ディレクターのラフ・シモンズにとって幼少期の無邪気さの象徴だというブルマーは、画一的な男性性を脱ぎ捨てるためのキーアイテムなのだろうか。

ダンヒル

　一方、英国紳士の洗練されたドレスコードを見せたのはダンヒル。テーラードスタイルに差し挟まれるビビッドな赤や黄色のニット、18世紀風の花柄のウエストコートなど、あくまで貴族的な男性像を貫きつつ、その豊かなバリエーションを示した。

　ショーをしないぶん、趣向を凝らした展示会で新作コレクションを発表したブランドもあった。

ヤコブコーエン

　たとえば、イタリアのデニムブランドのヤコブコーエンは会場全体を街に見立て、モデルを兼ねた金管バンドの生演奏も。カジノホールやアイスクリームスタンドの店員、自動車修理工や時計職人などに扮したモデルたちが、機能性とデザインを両立したデニムスタイルを披露した。

トッズ

　トッズは邸宅の豪華な庭園やテニスコートを舞台に、ブランドを象徴するドライビングシューズ「ゴンミーニ」を中心に、軽やかなレザーやリネンを使った装いを提案。会場には俳優の町田啓太さんも姿を見せた。

ソウルナッシュ、ミゲル・ヴィエイラ

　Snow Manのラウールさんは、英国のサウルナッシュとポルトガルのミゲル・ヴィエイラのショーに出演した。これまでに東京やパリ・ファッションウィークでモデルを務めてきたが、海外ブランドのランウェーは初めて。ミラノデビューにして２ブランドで出演権を勝ち取り、モデルとしての新境地をひらいた。