ハプニングも楽しもう　スマホは持たない「散歩の名人」の歩き方

　私はその人をひそかに「名人」と呼んでいた。

　昨年11月に「私の散歩道」のコーナーが始まると、毎回のように「読者おすすめの散歩道」に届くメールの投稿があった。送り主は横浜市戸塚区在住の高橋伸直さん（70）。

　投稿には、足柄古道（南足柄市）、浦賀道（横須賀市）、三浦砲台跡（三浦市）などの散策ルートが写真とともに丁寧に地図上に示され、所要時間が記されている。

　「仙石原湖尻自然探勝歩道」（箱根町）は「箱根でもマイナーな散歩道です。少し長いですが、高低差はあまりなく、春は草花も豊富でキジにも出合えます」と、添えられたコメントも具体的で分かりやすい。

　一体どんな人だろう。ぜひ記事に登場してもらいたい。3月下旬、取材が実現した。

　JR関内駅近くの朝日新聞横浜総局に現れた高橋さんは「横浜駅から歩いてきました」とさらり。2駅分だから3㌔以上ある。

　昨年リタイアするまで、技術者として電力関係の企業に長年勤め、水力発電所の建設や設計、調査に携わってきた。東南アジアを中心に海外での生活も10年以上に及ぶという。

　散歩は小学5、6年生のとき、友達と大船から戸塚まで歩いたのが最初だ。社会人になってからは国内外を歩き、文章と写真、地図を盛り込んで詳しく記録してきた。

紙の地図と方位磁石を頼りに

　海外赴任を終え日本に戻って…