第9回全日本逃した1年前、想像できなかった景色 部員一丸でつかんだ金賞

 1年前には想像すらできなかった景色が広がっていた。

 春日部共栄高校吹奏楽部が、全日本吹奏楽コンクール西関東代表の座を逃した、あの日から1年。部長でオーボエの成田愛生希(めぶき)さん(3年)は、1日に全国大会が開かれたアクトシティ浜松の舞台に立った。

 客席を埋めた観客の熱気と緊張に震えたが、日々の練習に裏打ちされた自信があった。

 一つ一つのフレーズから各楽器の動きに至るまで、徹底的に技術と表現を追求するのが、春日部共栄の練習スタイル。そうした練習を積み重ねてきたからだ。さらに、目指す音楽の方向性と気持ちは、西関東大会を経て一つにぐっと固まっていた。

 舞台に出る直前のチューニング室で、みんなで奏でた音は「バチッと決まった」。紺色のブレザー姿で舞台に進み出た部員たちの表情には、「いい音楽をするぞ」という気持ちがみなぎっていた。

全国大会で得た「初めての感覚」

 課題曲Ⅳの荘重な音色の序奏から、フレーズが説得力を持って美しく重なり、受け継がれていく。「いつもの合奏では出ない音。初めての感覚でした」。

写真・図版
春日部共栄=浜松市のアクトシティ浜松、高野良輔撮影

 そして、自由曲「ラ・メール」では、隣でイングリッシュホルンを吹く龍見とも乃さん(3年)とともに奏でたメロディーが、様々なパートに広がっていく。55人全員で、刻々と表情を変える海の情景を鮮やかに描き出した。

 3年生にとっては最後の大会。12分間の舞台を終えた成田さんの目には、涙があふれた。「終わっちゃう……」。成田さんに肩を寄せてたたえあった龍見さんは「2人で息を合わせて、最高の演奏ができました。客席で笑顔の人をみて、こんなに応援されているんだ、ということがうれしくて」と晴れやかな表情を浮かべた。

写真・図版
全日本吹奏楽コンクールでの演奏後に記念撮影する春日部共栄高校吹奏楽部=2026年11月1日、浜松市、河原田慎一撮影

この景色、次の代も……

 表彰式で部員たちは、練習でつけていた白いはちまきをみんなで一本につなぎ、客席で審査結果を待った。

 「春日部共栄高校、ゴールド金賞」

写真・図版
「ゴールド金賞」の結果を聞いて喜ぶ春日部共栄高校吹奏楽部の部員たち=2026年11月1日、浜松市、河原田慎一撮影

 歓声を上げ、抱き合って喜ぶ。そして一呼吸おいて、うれし涙が静かにこみ上げてきた。

 2年の時を経て、再びつかんだ全国金賞。打楽器パートリーダーの乾圭吾さん(3年)は、支えてくれた人への感謝の気持ちを語った後、こう続けた。「今までやってきたことを出し切ること。そこをがんばっていけば、賞はついてくる。みんなで切磋琢磨(せっさたくま)して、一丸になってやれたことがよかった」

 成田さんの「思い」は、すでに新体制の後輩たちに向けられていた。「昨年の西関東大会の後、『(全国大会の)景色を見せてあげられなかった』と先輩たちが言っていた気持ちがいま、すごく分かる。この景色を次の代のみんなも見て、味わってほしい」

写真・図版
応援に来た保護者や卒業生らに感謝のあいさつをする部長の成田愛生希さん(手前)=2026年11月1日、浜松市、河原田慎一撮影
写真・図版
全国大会金賞の結果に抱き合って喜ぶ春日部共栄高校吹奏楽部の部員たち=2026年11月1日、浜松市、河原田慎一撮影
写真・図版
大会終了後、賞状とトロフィーを持った部長らの到着を拍手で迎える春日部共栄高校吹奏楽部の部員たち=2026年11月1日、浜松市、河原田慎一撮影
写真・図版
春日部共栄=浜松市のアクトシティ浜松、高野良輔撮影
写真・図版
春日部共栄=浜松市のアクトシティ浜松、高野良輔撮影
写真・図版
春日部共栄=浜松市のアクトシティ浜松、高野良輔撮影

The post 第9回全日本逃した1年前、想像できなかった景色 部員一丸でつかんだ金賞 appeared first on Japan Today.