「核危機に対話を」 平和賞授賞式演説に賛否も…被爆80年の広島で

日本被団協のノーベル平和賞受賞について意見を述べる被爆者7団体などのメンバー=2025年1月26日午後1時59分、広島市中区、上田潤撮影  被爆80年の幕開けとなった今月の下旬、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の [...] The post 「核危機に対話を」 平和賞授賞式演説に賛否も…被爆80年の広島で appeared first on Japan Today.

「核危機に対話を」 平和賞授賞式演説に賛否も…被爆80年の広島で
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日本被団協のノーベル平和賞受賞について意見を述べる被爆者7団体などのメンバー=2025年1月26日午後1時59分、広島市中区、上田潤撮影
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 被爆80年の幕開けとなった今月の下旬、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)のノーベル平和賞受賞に関するイベントが広島県内で相次いだ。授賞式に合わせてノルウェー・オスロに渡った参加者らが報告をし、世界の核被害についての議論もあった。

 広島大平和センター主催の市民公開講座「ヒバクシャ、国境を越えて記憶を継(つ)なぐ」が25日、広島市中区の平和記念資料館で開かれた。

 登壇した長崎原爆病院名誉院長で被爆者の朝長万左男さんは授賞式翌日に現地のフォーラムに参加した。75歳で白血病を発症した女性被爆者の「ずっと原爆が体に巣くっていると思っていました」という言葉を紹介したといい、「核兵器の非人道性が極まるものとして伝えた」と振り返った。

 さらに、「核戦争に勝者はない」との合意を交わし、核兵器の大幅削減と冷戦終結につなげたレーガン米大統領とゴルバチョフ元ソ連大統領に触れ、「あの時代は直接の対話があった。核危機の今、対話と信頼の回復が必要だ」と述べた。

 英語で被爆体験を伝え続けてきた小倉桂子さんは、授賞式で訪れたオスロでの様々な行事の様子を紹介。パネル討論の中で、「人々の心を動かすのはヒューマニティー。いつもあなたの良心を、心の声を聞いてください」と呼びかけた。

 また、平和記念資料館の原田浩・第9代館長と石田芳文・現館長が、これまで22カ国60都市で延べ70回(うち核保有国で39回)開いた海外での原爆展について説明。被爆体験証言者で非核特使の八幡照子さんがアルゼンチンでの、笠岡貞江さんがスロベニアでの体験を紹介した。

 26日には平和記念資料館で、広島被爆者7団体などが主催するイベントがあった。日本被団協の田中熙巳代表委員の受賞スピーチに対し、称賛する声のほか、物足りなさを指摘する意見も出た。

 田中代表委員はスピーチで、日本政府が原爆の犠牲者に国家補償をしていないことに繰り返し言及した。

 7団体のうち、県原爆被害者団体協議会(箕牧智之理事長)の熊田哲治事務局長は「『亡くなった原爆被害者は何の補償も受けていない』とはどういうことなのか改めて確認し、戦争を起こした国の責任における補償を求め、被爆者を二度とつくらせない今日的意義を広め、運動につなげたい」と決意を語った。

 「核政策を知りたい広島若者有権者の会」(カクワカ広島)の田中美穂さんは、日本被団協が国家補償を求めてきた歴史や被爆者運動について改めて学んだという。「知った上で声を上げていかなければ、(核廃絶への)思いが厚みをもって伝わっていかないと感じた」と語った。

 一方で、スピーチにあった「日本で被爆して母国に帰った韓国の被爆者」との文言に批判も出た。韓国原爆被害者対策特別委員会の権俊五(クォンジュンオ)委員長は「受賞は本当に喜ばしい」としながらも「失望した」と発言。「私たち日本にいる朝鮮半島出身の被爆者、在朝の被爆者がぽつんと消えてなくなっている」と指摘した。

 県朝鮮人被爆者協議会の金鎮湖(キムヂノ)会長も「演説は感動した」としつつ「世界が注目する場で知らせてほしかったという残念な思いがあることも事実」と述べた。また、「アメリカの原爆投下責任に一言も触れていない」と指摘。「アメリカが原爆投下は非人道的だと認めなければ、核兵器廃絶の道は遠のく」と話した。

世界の被害者の声に耳傾けて

 25日には広島、長崎のカトリック教会関係者らが設立した「核なき世界基金」主催のシンポジウムも、広島市中区の聖母幼稚園ホールであった。旧ソ連が核実験を繰り返したカザフスタンを昨秋に訪れたジャーナリストの小山美砂さんや、元広島市長の平岡敬さんらが登壇した。

 小山さんは、慢性的な貧血や頭痛などに悩まされる現地の核被害者の声を紹介。「広島、長崎のことを伝えると同時に、世界の核被害者の声に耳を傾けることが必要だと実感した」と語った。

 核被害者への医療支援を続ける市民団体「ヒロシマ・セミパラチンスク・プロジェクト」の名誉会長として現地を17回訪れた平岡さんは「支援だけでなく、これからは連帯して、共に手を携えて核兵器をなくしていく形にすべきだ」と話した。

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